世界の国民投票 あんなこと こんなこと[その1]君主制のままか共和制とするか

国家の形態を「君主制(王政)」とするか「共和制」とするか。このテーマの国民投票は、フランス、ギリシャ、ブルガリア、ベトナム等々、さまざまな国で実施されていますが、ここでは1946年に実施されたイタリアの国民投票について紹介します。

1922年、イタリアは日本やドイツと同じように全体主義国家(ムッソリーニのファシスト政権)となりました。やがて、国内でレジスタンス(抵抗運動)が巻き起こり、連合国軍も加勢。イタリア軍はギリシア、アフリカ、東部戦線で惨敗し、ムッソリーニを指導者としたファシズム体制は1943年に崩壊しました。国王の命令により逮捕されたムッソリーニは、いったんヒトラーの命令を受けたドイツの特殊部隊に救われてスイスへの逃亡を図りましたが、パルチザンに見つかり公開処刑されました。

こうしたファシスト追撃と並行する形で、反ファシストという点では一致していた王政擁護派と国王の責任を追及する左派勢力が対立。イタリア解放後の1946年6月2日、制憲議会選挙と同時に、「君主制(王政)」と「共和制」のどちらを採るのかを問う国民投票を実施しました。結果、投票率89.1%で共和制支持者が54.3%と多数を制しました。

この頃、日本では天皇制存続の可否について極東委員会が討議を開始し(6月4日)、天皇制の存続については国民投票にかけるべきだという意見も出ましたが、枢密院本会議は憲法改正草案(新憲法草案)を可決しました(6月8日)。
日本国憲法第2条に(天皇の地位は)「主権の存する日本国民の総意に基づく」と記されていますが、国民の意思を確認したことは一度もありません。「生前退位」について議論するにとどまらず、天皇の人権ということも含め、天皇について国民的議論を重ね、国民投票によって主権者の総意を示し憲法に反映させるべきではないでしょうか